KLAVIER KLASSE 阪本康生

職業柄、きっと幼いころからピアノを習い始め、音楽が身近にある環境で育ったんだろう…と多くの方々がお思いになっているようです。

しかし、実際の私は幼児期、音楽に興味がなく、絵を描く方が好きでした。

小学校に入学してから、講堂で開催された音楽会で上級生が発表した合奏、合唱を聴いて一気に目覚めました！と言っても音楽そのものより、グランドピアノと言う あの大きな黒い楽器ってカッコいいなぁと…視覚的イメージから入ってきました。

両親にピアノを習いたいとせがみましたが、どうせ続かないだろう…アップライトピアノであっても弾かなくなったらお荷物になるだけだし…となかなか取り合ってくれませんでした。(書道、英語、体操…ほかの習い事は望まずとも行かされていたのに)

その間、落書帳に見よう見まねでデタラメなト音記号や音符を書きながら、さも弾いている気分で鼻歌…そしてずっとピアノ・ピアノ・ピアノ…と言い続ける状態が数年続くものですから、それだけ言うのなら…と親も根負けして、やっと楽器を購入。念願のピアノ教室にも通うことができました。

しかし、時すでに小学校も半ば…小さい時から習っている同級生は当然両手でスラスラとカッコいい曲を弾いています。自分はたどたどしく片手ずつからの練習曲…早く追いつきたくてどんどん譜読みし、懸命に練習するものですから、レッスンのたびピアノの先生に誉めていただき、いい気分になって(笑) 努力を重ねていきました。

ピアノ教室での練習課題のほか、学校の音楽の授業で先生が弾かれた歌の伴奏を真似たり、当時のヒットソングを耳コピして弾いて楽しんでいました。ピアノ発表会では毎回結構な難曲にチャレンジ。お客様に沢山拍手をいただき励みになりました！

レッスン開始後は順風満帆！

…ではなく、節目ごとに挫折と再生の連続。

ピアノの発表会には出演しながらも、当初から心待ちにしていた小学校の音楽会は学校の都合で絵画展に変更され、念願のピアノパート出演は果たせずじまい。ガックリと肩を落としつつ、気が収まらず、クラス内のお楽しみ会で自らミニコンサートと称し、オルガンで数曲独奏。(実力はともかく演奏魂だけは芽生えていたようです）

中学時代はあまり冴えない日々でしたが、ピアノレッスンだけは続け、音楽の授業では先生から時々伴奏を指名されていました。

心機一転、楽しい高校生活！そして、いよいよ進路を決めて、音楽大学を目指すため専門的に指導してくださる先生に変わったときは、基礎ができていないから…と、ぐーっと曲のレベルを落として再スタート。(当初ショックでしたが、致し方ないと臨みました）

お陰様で進学を果たし、友人に恵まれて大学生活を謳歌、学内では成績を評価いただき卒業演奏会にも選抜され出演。

そして、卒業後さらに研鑽を積もうと師事した別の先生から、これまでの古い奏法の改善や新たな練習法、より深い読譜の仕方などをご指導いただき、またまた壁を乗り越える事態に…

しかし、ここまで来ると終わりなき探求！と腹をくくることができました。未知なるものに出会える喜びとして！ 

すると、徐々に音色に幅ができ、日々の練習で音楽表現を磨く愉しみを見出せました。研鑽無くしてリサイタルやコンチェルトのソリストを務めることはなかったと確信しています。

音楽の仕事を始めて8年ほど経過した時、父が突然の病で亡くなりました。若い時に勤め人から自営に転じ、我が道を行く人間でした。厳しい人で、私が甘えた経験はありませんが、1度の人生、己の道を拓いて歩む信念を教わった気がしました。

そこで一層、ピアニストとしての演奏活動に重点を置き、教育面では外部のピアノ講師養成など指導講師の仕事を全て整理し、自らの教室で直接レッスンする生徒さん対象のみに絞って注力しようと決意しました。

これまでの色々な学びや経験、貴重なご縁に恵まれ演奏活動を続けている者として、生徒さんにアドバイスできることがあります。才能豊かな天才肌でなく、弾けなかったことが弾けるようになる過程を何度も経てきた自分だからこそ、お伝えできるものがあると自負しています。

自らを信じ、あきらめず、少しずつでも歩んで行く中で希望が叶う！と実感しています。

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