聴く人に委ねられた楽想

作曲家であり、ロシアン・ピアニズムの権化・ラフマニノフ。

2m近い長身で、格別大きく柔軟な手をもつピアニストであったため、幅広い音程の和音や跳躍をダイナミックに難なく演奏していました。

その特徴が作品にも自然に表れています。

 

「エチュード・タブレー」(絵画的練習曲集)と名付けられた作品より1曲。

ラフマニノフ独特の重量感のある低音の響きと急速なパッセージが印象的です。

「ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調」や「プレリュード 嬰ハ短調 」(鐘)など、有名な作品にも登場しますね。

 

また、反対にラフマニノフ特有の息の長いメロディーは封印され、断片的なモティーフが閃光のように駆け巡ります。

そして、甘く切なげな旋律よりも和声の響きに重心を置いた作風は、モスクワ音楽院の同級生でもあったスクリャービン的な技法をイメージさせるとも言われています。

この作品はすぐに口づさめるようなメロディーラインがなく、どこか抽象的な感じがします。

だからこそ聴く人の感性で、曲に内蔵された激情と悲劇性を捉え、それぞれの「音の絵」を描き出せるのではないでしょうか?