超難関&超魅力的

今日は近代フランス音楽、ラヴェルの「ピアノ三重奏曲」をお届けします。

ラヴェルと言えば、「ボレロ」「ピアノ協奏曲」などが良く知られていますね。

“オーケストラの魔術師”と称えられるように色彩感豊かな卓越した管弦楽法を駆使した作品を残していますが、ピアノ曲でも「水の戯れ」「亡き王女のためのパヴァーヌ」はじめ独自の世界を展開させました。

彼は母親と同じくフランスとスペインにまたがるバスク地方の出身であることから、そこにアイデンティティを見いだし、作品にも大きく影響しています。

 

この曲を作曲した1914年は、まさに第一次世界大戦の勃発した年。

39歳の彼はパイロットとして前線に出ることを志願しましたが、年齢的なことと体が虚弱だったことから採用されず、後にトラック輸送兵として従事。

しかし、兵営暮らしから体調を壊して戦火を後にし、生まれ故郷のバスクで傑作を生み出しました。

しかも「5か月分の仕事を5週間で仕上げた」とのラヴェルの手紙が残されているように、短時間にも関らず、それまでの集大成と思わせるくらい完成度の高い大作です。

 

これまでもベートーヴェン、メンデルスゾーン、ブラームス…などピアノ三重奏曲の名作はありますが、ラヴェルの作品は全く違う斬新さがあるのです!

ピアノ、ヴァイオリン、チェロのそれぞれを極めてオーケストラ的な書法を持って扱い、非常に広い音域と極限まで様々な演奏テクニックをふんだんに用いて表現されています。

バスクの古い民謡や舞踊によくあるそうですが、4分の5拍子、4分の7拍子など変則的なリズム性を交錯させ、近代的な和声感、微妙なグラデーションが唯一無二のピアノトリオとなったのです!

それだけに、演奏は超ムズカシイです。(笑)

自分のパートを弾きこなすのは勿論、そこからアンサンブルとして構築していくのですから…

でも、やっぱり素晴しい作品なので、若い頃からチャレンジして良かったと思っています。

 

近代的な手法を余すことなく用いながら、スタイルは伝統的な4楽章構成をとっています。

その中から、フィナーレ・第4楽章をUPしました。