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備える日々

滞っていたレッスンは半歩ずつ進んで来ましたが、コンサート活動の方はなかなかです。

主催公演の方は客席が現在のところ本来の人数の半数程度までしか収容できないことになっていて(以前は4分の1のところもあり、少し緩和されましたが)、集客、予算、演奏内容など総合的に判断して中止、延期の状態です。

依頼演奏は主催者側の判断でにより、コンサートや学校公演が中止になっています。

ホスピタルコンサートもご依頼いただいていましたが、こちらも見送りになりました。

 

病院でのコンサートと言っても、一般病棟、マタニティー専門と様々ですね。

それらですとあまり躊躇なく一歩踏み出せそうですが、すぐに決断できず熟慮の上、ようやく昨年お受けし1度演奏に伺いました。

何故かと言うと、ホスピス(緩和ケア)の患者さんとご家族対象と伺っていたからです。

 

経緯を少し綴りますと…。

その病院のホスピス看護師長をしている私の元生徒さんが、リサイタルに来られた後に「院内コンサートで患者さん達に先生のピアノを聴かせてあげたいと思う時があります」と何度かお便りに添えられていて、気になっていたものの即答できませんでした。

人生の最終章を生きてらっしゃる方々に必要とされるのならば聴いて頂きたいと言う思いがありながら、どんな心得を持って臨めばいいのか…と決心がつかず、その狭間に悩んでいたのです。

しかし、私の恩師のおひとりが「ホスピスで最期を迎えられた」とかつてご家族から伺っていたことや、長年音楽を愛好してこられた方が、ホスピスに入院中にお見舞いに行った時、音楽の話をしたり、スマホで音楽を流したりすると、お顔が輝いておられるのを目の当りにし、それらが原動力になりりました。

そして、自分の音楽人生を振り返った時にも「できるのに行わなかったため、後悔することがないように」と言う思いで伺うことを決めました。

 

会場は上品で美しいサロンに木目素材のピアノが設えられ、素敵な空間でした。

テンポのゆったりした静かなクラシック作品や映画音楽を30分ほど演奏しました。

合間に短いお話を挟みながら進め、皆さんの方に目をやると、大きな拍手をして下さる方、ご家族と頬笑みあう方、移動ベッドの方もプログラムが進むにつれ口元がにっこりされて、何度もうなずいておられる方など、それぞれに聴いて下さいました。

音楽をお届けするのが目的であり、皆さんのご様子が実際どのような状態かわからなかったのですが、そのように温かい反応をいただき、自分の人生にピアノを奏でる役割を与えられた感慨ひとしおでした。

生の演奏はその瞬間の連続で、留まることの無い一期一会の世界。

その中でも特別な時空にご一緒させていただき、本当に貴重な経験でした。

 

病院側も感激してくださり、毎年お伺いする予定にしていました。

今年は6月に決定していましたが、一連の事情で中止になり、今後もどのようになるか未定です。

全て委ねるしかありませんので、またご依頼があった時、伺えるように備えておきたく思います。