昨日は2名の生徒さんが、偶然にもそれぞれショパンの作品を選び、少し苦労しながらもチャレンジされていました。
ノクターンop.27-2、エチュードop.10-3、…極めて魅力的な旋律と醸し出される独特の叙情性。
聴いていると引き込まれ、弾いてみたくなります!
そして弾いてみると「アレ?聴いた感じとどこか違う…なんか違う…」となりがちです。
ポイントになることを書いてみます。
①柔軟な奏法
美しくメロディアスな世界は、その旋律を表現する手指の極めて繊細な奏法によって成り立っています。
撫でるようなタッチや、鍵盤に指が吸い込まれるようにスッと柔らかく落とすようなタッチなどが必要です。
鍵盤を押す→ハンマーが弦を叩く→音が鳴る…と言った打楽器的な発音原理のピアノをいかに歌うような滑さをもって表現できるかが重要!
②メロディーだけに気を取られないこと
副旋律や伴奏パート、すべてを支えるバス(低音)等、複数の声部がはっきりわかるように記譜されている場合は勿論、それらが隠れているような記譜法の場合もそれを見出し、まず各パートの役割を表現できるように、パート別に徹底的にさらう。
そして、合わせるときは複数の奏者のアンサンブルのごとく弾けているか、音量や音色のバランスをチェックし、立体的な音楽を創造して行きます。
③テンポ・ルバート(盗まれた速さ)
ショパンの演奏に不可欠な要素。バスや伴奏パートのテンポ感は崩れず、メロディーは自由にカンタービレ(歌うような)奏法で紡いでいく。
勿論、イン・テンポ(一定の速さ)で弾けてから!
ショパンは弟子が余りに適当にテンポを揺らして弾くので、メトロノームを使用して矯正させたとか。
④ペダル
全てが練習できたら、より磨きをかけてペダルを加えます。
右のペダル(音を重ねたり、混ぜたり、ボリュームを増したりするためのダンパーペダル)を繊細に細かく踏みかえたり、ハーフペダル(全部踏みかえず、半分くらいの操作でバスのラインは繋いだまま、他パートの音は濁りを避ける)で効果を出す。
また、必要に応じ、左のペダル(ピアノは中音域から3本の弦が張られているが、これを踏むと1本のみ打弦となり、ソフトな弱めの音質になる。ソフトペダル、ウナ・コルダ:1つの弦と呼ぶ)を使用して一層音色に変化をつける。
ショパンはバロック期に活躍し、音楽の父と呼ばれるJ.Sバッハと、古典派・神童として誉れ高いモーツァルトを尊敬し、日頃から自身の作品のコンサートの前であっても、彼らの作品を練習していたと伝えられています。
上に綴った②は多声部や対位法の巨匠バッハの作曲法に通じ、③はモーツァルトが自身のアダージョ(ゆったりとしたテンポ)の楽曲で見せた演奏法を彷彿させることからも、それらが源泉になっていると伺えますね。
そして①④はショパンのオリジナリティー溢れる世界を創造するにあたって吟味を重ねるところだと思います。
「新型ウィルスの自粛期間で日頃取り組めないレベルのものをやってみました」と言う向上心。
「こんな難しいの選んで、先生に笑われる…」と言いながら果敢にチャレンジ!
それぞれの生徒さんの取り組みにショパン大先生も応援しているのではないでしょうか。
私は応援しています!