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大いなる学び

コンサートはどのステージも大切ですが、昨日You TubeにUPしたショパンのコンチェルトも重要な演奏会でした。

 

ソリストとしてオーケストラをバックに演奏する協奏曲には独特の醍醐味があり心地良い反面、緊張感もたっぷり。

マエストロ率いる60人近い凄腕のオーケストラのメンバーと、コンサートホールの1000席のお客様に挟まれるのですから!

若き日のことなので、恩師のお一人がゲネプロ(本番前の通しリハーサル)から聴きに来てくださっていました。

ところが普段問題無かったのに上手くいかない部分があって、焦りました!

さぞ先生もヒヤヒヤしていらっしゃったと思うのですが、ゲネが終了し、オケの退散後も舞台に残って練習している私に、「弾くのは もうよしなさい。ご飯食べ行きましょう!」と半ば強引に誘って下さり、タクシーを飛ばして、先生お気に入りの日本料理店でご馳走になりました。

でも、私にすれば味わっている余裕などなく、テーブルの下で自分の膝を鍵盤に見立て、頭の中で音を出し、ゴソゴソ指を動かしていたのです。(あくまでも静かに…)

しかし、お料理も何品目か進んだ所で、「もう余計なこと考えずに食べなさい。これ美味しいのよ。」と見透かされていました。

日頃のレッスン時は勿論、その洞察力には驚きです!

 

お陰様で気分転換でき、栄養が体や脳に行き渡り、不安のスパイラルからも脱出。

上手くいかなかった原因を冷静に分析(バスの進行に突然迷いが生じたためだったので再確認)し、本番は弾き切る事ができました。

終演後の楽屋では「あなたもやったらできるのねぇ」と、ほんの少し瞳を潤ませておられた先生…

内心は案じてくださった師の愛が私の演奏を支えてくださったのだと感謝するばかりでした。

 

高校時代からお世話になった先生なのですが、モットー…いや、私への口癖は「地道に勉強しなさい。きちんと努力していたら、それをちゃんと見てくれている人が必ずいるんだから…」 

当時、「それなりに」練習しているつもりの私でしたが、今思えば量も質も足りていませんでした。

それでも声を荒げることもなく、「もっと弾きなさい」と気長に見守って下さっていた先生…穏やかなのに存在感があり、説得力に満ちておられました。

もう天上にいらっしゃるのですが、お姿を思うと身が引き締まります!

心身は無駄に緊張せず、自然体で…そして志、初心を忘れず、私なりの音楽人生を歩んで参ります。